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「シッターズ」レビュー|コンビ格差と、一つの嘘から動き出すコメディBL

人気絶頂のお笑いコンビで、売れているのは相方だけ。っえの同人BLコミックを、格差という設定の組み立てと、公開されていない分量の両面から読み解きました。

4.5公開:更新:

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作品の概要

サークル「っえ」(作画・何某)が2024年8月6日に配信した同人BLコミックです。ファイル形式はJPEG(PDF同梱)、容量は376.63MB。年齢指定はR18で、価格は440円です。ジャンルタグには「コメディ」「体格差」が並びます。

物語の骨子はこうです。人気絶頂のお笑いコンビ「シッターズ」。ただし人気の実体は、容姿端麗で才能の溢れる24歳のボケ「五歳」に集中しています。ツッコミの相方「みお」は、日々顕著になるコンビ格差に途方に暮れていました。「じゃない方芸人」のレッテルを貼られ、後輩芸人にまで陰口を言われ続けたある日、耐えきれなくなったみおは解散を申し出ます。ところが世間で評判のクールな容姿とは一変、五歳は幼児のように泣き喚いて心を閉ざしてしまう。どうしても解散したい一心で、みおは自分がゲイだという嘘をつく——そこから物語が動き出します。

ページ数が公開されていない点について

購入判断に直結するので先に書いておきます。本作のページ数は、公開情報からは確認できませんでした。 販売ページの作品情報表にページ数の欄そのものが無く、作品説明文にも記載がありません。容量376.63MBという数字は分量を推し量る手がかりにはなりますが、画質と解像度に左右されるため、ページ数の代わりにはなりません。同人コミックの購入判断で分量は大きな要素なので、この欠落は本記事の評価にも反映しています。

こんな人に刺さる

「対等なはずの関係」が傾いていく構図に反応する人。 お笑いコンビは、制度としては二人一組で対等です。ところが本作の設定では、人気も才能も容姿も片方に偏っている。上下が最初から決まっている主従ものと違い、対等であるべきなのに対等でないという状態が主人公を追い詰めます。「本来なら並んでいられるはずなのに」という前提があるぶん、格差の痛みが具体的な形を取ります。

コメディの枠で重い題材を読みたい人。 ジャンルタグの筆頭は「コメディ」です。劣等感、陰口、解散の申し出——並べれば重い要素ばかりですが、それをコメディとして扱うと最初から表明している作品です。シリアス一辺倒の展開が苦手な人や、精神的な負荷を抑えて読みたい人にとって、この方針そのものが選ぶ理由になります。

外向きの像と内実が食い違う人物が好きな人。 五歳は「世間から評判のクールな容姿」と紹介されながら、解散を告げられると幼児のように泣き喚く人物として提示されます。このギャップは読み進めてようやく分かるものではなく、あらすじの段階ではっきり掲げられている本作の看板です。

読みどころ

「嘘」を物語の起点に据えた設計が、本作の骨格です。みおがつく嘘は、解散という目的のための手段でしかありません。ところが相手はその嘘を受けて泣き止んでしまう。つまり、関係を終わらせるために使った嘘が、関係を続ける理由に化けるという反転が仕込まれています。最初の一手が目的と逆向きに働く構造は、その後を引っ張る力が強く、短い導入で読者を先へ運びます。

芸能界という舞台の使い方も見どころです。お笑いコンビという設定は、二人が仕事上の関係でもあることを意味します。解散という選択肢が常に机の上にあり、しかもそれは私的な別れではなく職業上の決定でもある。関係の行方に社会的な結果が伴うため、「別れる/別れない」が二人だけの問題に閉じません。同居ものや幼なじみものと並べたときの、この作品固有の緊張の出どころです。

一方で、作画や演出の具体については、公開情報だけで踏み込んだ判断はできません。コメディとして成立するかどうかは間の取り方に大きく左右される部分でもあります。絵柄とテンポの相性は、販売ページのサンプルで確かめてください。

似た作品との比較

同じBLコミックの「ご主人様の堕とし方」と並べると、扱っている「格差」の性質が正反対です。両作とも二人のあいだの落差を軸にしていますが、こちらは現代の芸能界における人気の格差、あちらは異世界の貴族社会における主従の格差です。

違いは、格差が制度化されているかどうかに出ます。本作の二人は制度上は対等なコンビで、それでも実質的な差が開いていく。だから主人公は埋められない差に苦しみます。あちらは主従という上下が最初から明示されていて、その上下が物語の中で踏み越えられていく。片方は格差を埋められないことに苦しみ、もう片方は格差を踏み越えられてしまう、という対照です。

トーンも噛み合いません。こちらはコメディを前面に出し、あちらは執着と溺愛をそのまま押し出します。重い題材を軽い枠で読みたいならこちら、重さをそのまま受け取りたいならあちらという選び分けになります。

価格はこちらが440円、あちらが880円でちょうど倍です。ただしページ単価の比較はできません。 本作のページ数が公開されていないためで、あちらは計55P(本編49P)と明示されています。買う前に分量を確定させたい人にとっては、あちらのほうが判断材料が揃っています。

総評

評価は4.5。 「対等なはずの相方との格差」という、BLとしても職業ものとしても機能する設定を選び、そこに「終わらせるための嘘が関係を続けてしまう」という反転を組み合わせた構成を評価しています。導入の時点で物語が動く仕掛けが用意されているのは、同人コミックとして効率のいい設計です。440円という価格帯で、設定と構成の両方に狙いが通っている作品は多くありません。

減点は一点、ページ数が公開情報から確認できなかったことです。同人コミックは分量が価格の妥当性を大きく左右するため、そこが分からないまま買うのは、判断材料が一つ欠けた状態になります。440円という価格はその不確かさをある程度吸収してくれる水準ではありますが、記事として保証はできません。

「対等でいられない関係の痛みを、コメディの枠で読みたい」——その期待で買うなら、設定の時点で応える用意がある作品です。分量だけは、販売ページのサンプルで確かめてから決めてください。

作品データ

レーベル
っえ
作家
当サイト評価
4.5

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